【犬の病気】消化器系の病気

消化器系の病気(胃捻転・急性胃炎・腸炎・腸閉塞)

胃捻転
【症状】
胃の中に何らかの原因でガスが溜まったり、食べ物で膨れ上がった状態(胃拡張)で、文字通り胃が
時計回りにねじれる事を指します。症状としては、
■お腹が膨れ上がり軽く叩くとポンポンと太鼓のような音がする
■嘔吐(吐こうとしても吐けない状態もある)
■ゲップ
■大量の水の摂取
■大量のよだれ
などがあります。胃捻転を起こすと、胃と脾臓の血管もねじれて血行が遮断され、ショック状態になって、放置すれば、
数時間で命を落とすこともあります。

【原因】
明らかな原因は不明ですが、症例として多いのは、一度に過度の食事(量)や水の大量摂取、食後すぐの激しい運動です。
胃は体内で固定されている訳ではないので、大量の食事や水の摂取により、胃が重くなり、その状態で運動をすることで胃が大きく動いてしまい、腸と絡まったりするのです。
■食後すぐの激しい運動
■早食い
■胃でガスを発生しやすい食べ物(ドッグフード)の摂取
■水のがぶ飲み
■ストレス
■加齢
■遺伝
など言われていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
比較的よく見られる犬種としては、
中~大型犬ではグレートデン、コリー、ボルゾイ、セントバーナード、ロットワイラー、ラブラドールレトリバー、
アラスカンマラミュートなどです。小型犬ではミニチュアダックスフント、ペキニーズ、コッカースパニエルなどが挙げられます。性差や年齢は関係ありません。

【治療】
まずは胃の膨らみを解消するために、胃にチューブを入れたり胃に太い針を刺して胃の中のガスを抜きます。
重症の場合は、全身麻酔をかけて開腹し、ねじれた胃を元の位置に戻します。
ただ単に戻しただけでは、約8割の確率で再発すると言われているため、胃の一方を固定することもあります。
また症例によっては、胃を部分的に切除して容積を減らすという手術も有効です。

【予防】
●一度に大量の食事を食べさせない。
●食後すぐに運動をさせない。
●早食いをさせない工夫をする。
●1日の食事回数を増やす(少量を分けて与える。高齢の大型犬は、特に少量頻回にする。)
●不安・ストレス・興奮時には特に起こり易いので、食事制限する等注意する。
※胃の固定手術をする(獣医師とよく相談して下さい)                                

Note!
かかりやすい犬種としては、コリー、ボルゾイ、シェパード、ワイマラナーなどガスを吐き出すことが難しい大型犬で深い胸を持つ犬です。ダックスフンド、ペキニーズ、コッカー・スパニエルなど、小型犬や中型犬でも(比較的少ないようですが)見られることがあります。

急性胃炎
【症状】
急性胃炎は、胃の粘膜に炎症が生じた状態のことです。
その症状が1週間以上続く場合は慢性胃炎になり、1週間以内で収まるものを急性胃炎といいます。
胃の一部が炎症を起こすことでさまざまな症状を引き起こしたり、自分の吐き出した胃酸で食道が傷つき、       「逆流性食道炎」を発症することもあります。
症状としては、よだれを頻繁に垂らしたり、嘔吐が見られます。
胃で激痛が起こるため腹部を伸縮させながら嘔吐します。                             嘔吐により脱水症状を引き起こしてしまうこともあり、また胃の粘膜が炎症を起こしていて              出血している場合には血液が混じった胃液を吐くこともあります。
■嘔吐
■下痢
■血便
■元気減退
■食欲減退
■よだれを垂らす
■脱水症状

【原因】
・誤飲誤食によるもの
原因で最も多いのが、誤飲誤食です。
犬が食べると中毒症状を引起す可能性のある玉ねぎやチョコレート、アボカドなど、犬に与えてはいけない
食物や農薬や殺菌剤などの毒物、植物、ごみなどの異物などさまざまなものによって引き起こされる
可能性があります。
また、腐った食べ物や毒物、脂肪分が多かったり味の濃い食事を取ったりしたときに起こる事もあります。
・寄生虫によるもの
寄生虫感染により、胃炎を発症してしまうことがあります。特に多いのが回虫やフィサロプテラと言われる虫によるものです。
・ウィルスや細菌によるもの
ウィルスや細菌の感染により、急性胃炎を発症してしまうことがあります。特に多いのが犬伝染性肝炎や犬ジステンバー、パルボウィルス感染症などがあります。
・不衛生な環境によるもの
犬の飼育環境が著しく劣悪な場合、犬が不衛生な水を飲んでしまったり、腐敗した食べ物を食べてしまうことで急性胃炎が引き起こされることがあります。

【治療】
基本的な治療法としては12時間の絶水と24時間の断食になります。これで約1~5日で回復します。           その後、回復が見られた場合には、徐々に水を与え、消化のいい流動食などを与えて通常の食事に戻していきます。

・誤飲誤食が原因の場合、
固形物の場合は嘔吐促進剤を使用したり、内視鏡と鉗子(かんし=手術用の小さなマジックアーム)で除去、
液体の場合は胃洗浄や吸着剤の投与で胃の中をきれいにしていきます。
嘔吐により著しく体液が減り、脱水症状を起こしている場合には輸液や点滴を行うこともあります。

・基礎疾患の治療
寄生虫や感染症が原因で胃炎を引き起こしている場合、抗生剤やレボリューションなどの駆虫薬を使用し、
駆虫作業を行います。

胃に優しい低脂肪フードや単一たんぱく、単一炭水化物などの食事でしばらくは過ごすようにしましょう。

【予防】
誤飲誤食をしないように、犬の届く所に食べ物や危険な物を置かない事が大事です。
また、人間の食物を与える際は、食べてよい物と行けない物、投与量をしっかり確認しましょう。
拾い食いなども危険なので、拾い食いの癖がある子は
拾い食いをしないようにしつけをしましょう。
→拾い食いのしつけ方法
原因となるウィルスや細菌に感染しないように、定期的なワクチン接種をしましょう。
また、常に衛生的な環境を心掛けましょう。
腸炎
【症状】
腸の粘膜に炎症が起きる病気です。
腸炎には、急性と慢性の症状があります。
また、炎症の起きる場所によっても多少、症状の違いがあります。
・小腸に炎症…液体状のゆるい便が出やすくなります。
栄養を吸収できなくなり、貧血を起こし、体重が減ります。
・大腸に炎症…便に血や粘液が混じりやすくなります。
排便回数は増えることが多いようですが、栄養は小腸で吸収されているので、
体重の変化はそれほど見られません。

■急性腸炎
【症状】
腸の粘膜に炎症が起き、急によだれを垂らすような吐き気、嘔吐があります。
腹部が膨れたりすることもあり、下痢が伴う場合が多く、軟便や水溶性の便になり、
症状が重くなると血便、脱水症状が進行する場合も。

原因が感染症の場合には重症化しやすく
発熱や腹痛はあまりありません。

【原因】
①細菌感染
比較的多い要因としては、腐った食べ物や水を飲んだことによるブドウ球菌、
レンサ球菌などの細菌感染です。
②ウイルス感染
ジステンバー、伝染性肝炎、パルボウィルスなどのウイルス感染症による発症。
③過食(仔犬)
仔犬は過食などが原因になることもあります。
④異物や食物により中毒
また、室内でも観葉植物や毒性のある植物や食物を口にした場合、
おもちゃなどの異物を飲み込んだ場合でも急性腸炎を引き起こします。

【治療】
原因が異物を飲み込んだ場合は外科的手術で取り除きます。
細菌感染が原因の場合は抗生物質や下痢止めなの投薬をし、
嘔吐や下痢を抑制します。

【予防】
口にしてはいけないものを食べないように生活環境を整え、
拾い食いをしないようにしつけておきます。
特に子犬の場合は下痢や嘔吐だけでも様子を見ることなく、
早めに受診することで重篤な状態になるのを避けることができます。
またウィルス感染症は定期的なワクチン接種で防ぐことができるので、
1年に1度のワクチン接種を心がけます。

■慢性腸炎
【症状】
小腸や大腸の粘膜が慢性的に炎症をおこし、長期にわたり症状が続く
状態を慢性腸炎といいます。
進行はゆっくりと進み、急性の腸炎と比べると症状は軽いですが、
下痢や嘔吐などの症状を繰り返すので全身の衰弱が見られるようになり、
栄養不足で抵抗力が弱まり、他の器官にも影響がでてきます。
主な症状として
■下痢
■嘔吐
■お腹がぐーぐー鳴る
■口が臭い
などがみられ、
■たくさん水を飲むのでおしっこの量が増えます。
■便には粘膜や血液が混じる事もあります。
このような状態を慢性的に繰り返す状態になることで体重の減少も見られるようになります。

【原因】
原因は多岐にわたっており、
①炎症性腸疾患
炎症細胞が腸の粘膜全体に広がることで
慢性的な炎症が起こるといわれています。
主な炎症細胞にはTリンパ球、好酸球、プラズマ細胞、肥満細胞などがあります。
②細菌の増殖
サルモネラやカンピロバクターなどの細菌が増殖し炎症がおこる場合もあります。
③寄生虫によるもの
ジアルジアなどの寄生虫によるものもあります。
④食物アレルギー
また動物性タンパク質や食品添加物、人口着色料や保存料、
乳淡泊、小麦グルテンなどの食物アレルギーが原因になる事もあります。
⑤腫瘍
腫瘍がある場合も考えられるので注意が必要です。
⑥遺伝
特定の犬種の腸炎の発症率が高いことから、
遺伝が関係しているとも言われています。
主な犬種としては、フレンチブルドッグ、バセンジー、ノルウェジャンルンデフンド、
ボクサー、アイリッシュセッターなどです。
⑦ストレス
不安やストレスなどにより腸炎が引き起こされる事もあります。
⑧急性腸炎
また急性腸炎で、適切な治療をしなかったことで
再発を繰り返し慢性化することもあります。

【治療】
内視鏡検査で胃や腸の細胞を採取して検査します。
胃や腸を一部切開して検査する場合もあります。
検査により、原因を明らかにし、適切な治療を施します。

基本的な治療は、腸の粘膜の炎症を抑える副腎皮質ステロイドの投薬と
と食事のコントロールになります。

寄生虫が原因の場合は、抗原虫剤(駆虫薬)を投薬します。

腫瘍が原因のときは外科手術による切除、抗がん剤治療

一般的に慢性腸炎は完治するのが難しい疾患ですので、
疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。
ステロイド中止すると再発する場合は長期間継続が必要になります。
生涯を治療を継続していかなければならない場合もあります。

【予防】
普段から定期的に健康診断を受けることをおすすめします。
また、バランスのよい食事を心掛けましょう。
どのドッグフードが愛犬の身体にあっているかを
見極められるとよりよいでしょう。
→よいドッグフードとは
誤飲誤食をしないように、犬の届く所に食べ物や危険な物を置かない事が大事です。
また、人間の食物を与える際は、食べてよい物と行けない物、
投与量をしっかり確認しましょう。人間の食べ物は犬には刺激が強く、
腸炎の原因にもなる可能性もあるので、極力控えた方がよいでしょう。

拾い食いなども危険なので、拾い食いの癖がある子は
拾い食いをしないようにしつけをしましょう。
→拾い食いのしつけ方法

原因となるウィルスや細菌に感染しないように、
定期的なワクチン接種をしましょう。

常に衛生的な環境を心掛けましょう。
飲み水は必ずきれいで新鮮な水を与えます。

不安やストレスを取り除くのも大事です。

Note!
腸炎に効く効果的な栄養素
ビタミンA
緑黄色野菜に多いβ‐カロテンは抗酸化作用で免疫力を高め、感染症対策に役立ちます。
胃腸の粘膜を保護する栄養素です。

ビタミンU
腸の粘膜の新陳代謝を活発にし、粘膜を修復する働きがあります。
キャベツやレタスに多く含まれている成分です。

食物繊維
食物繊維の摂取は便の状態を良好にします。


腸閉塞
【症状】
腸閉塞とは、腸管に何かが詰まって正常に機能しなくなった状態のことです。
主な症状としては、嘔吐、便やガスが出ない、腹痛の三つであり、便が出ないた め、胃や腸の中でガスが発生し、
お腹がふくれてきます。嘔吐やげっぷが繰り返しあり、その臭いは腐敗臭のような臭いを放つことも特徴的です。
腸が完全に閉塞するような重篤な場合には、上記の症状のほか、激しい腹痛からお腹を丸めた姿勢をとり、
お腹を触ると痛がります。呼吸も浅く速くなったり、元気もなくなります。閉塞した腸の血行が阻害されると、
腸管が壊死してショック状態に陥り、死に至ることもあります。
■食欲不振
■腹痛(触ると痛がる・背中を丸める)
■嘔吐
■多飲

【原因】
①異物の誤飲
多くは、おもちゃ(ボール、人形など)、ビニール、木片など異物を飲み込み、
それが腸管内に詰まってしまうことがあります。
②腫瘍
腸管内にできた腫瘍が通過道を塞いでしまうことがあります。
この原因の場合、時々の嘔吐や便が細くなることが多く見られます。
③周辺臓器の肥大
炎症や腫瘍などで腸の周辺臓器が肥大し、腸管を圧迫して閉塞部を形成してしまうことがあります。
④手術
胃腸の手術をした後、一時的に蠕動運動が停滞し、腸閉塞を起こすことがあります。
⑤腸捻転(ちょうねんてん)
パルボウイルス・ジステンパーなどのウイルス感染や寄生虫が原因で腸重積(腸管の一部が隣り合う腸管に
入り込んでしまう病気)が生じたり、腹部のヘルニアに腸管がはまり込んだり(嵌頓:かんとん)、
腸捻転から腸閉塞を起こすこともあります。
⑦電解質の異常
血中の電解質濃度が異常だと、腸の蠕動運動が阻害されることがあります。具体的には、低カリウム血症、
低カルシウム血症、低マグネシム血症などです(無力性イレウス)。

【治療】
異物が明らかにある場合は、外科的に手術をし、つまっている異物を取り除く方法が適用されます。
異物が小さければ、内視鏡によって異物を取り除くことも可能です。
それ以外の原因については、その基礎疾患に対する適切な処置を施します。

【予防】
誤飲誤食をしないように、犬の届く所に食べ物や危険な物を置かない事が大事です。
仔犬は何でも口に入れてしまうので、愛犬が届く範囲内に飲み込めるようなものを置かない、
目を離すときにはケージに入れるなど、異物を飲み込む危険がないようにしましょう。
拾い食いなども危険なので、拾い食いの癖がある子は拾い食いをしないようにしつけをしましょう。
→拾い食いのしつけ方法

原因となるウィルスや細菌に感染しないように、定期的なワクチン接種やフィラリア投薬などをしましょう。