【犬の病気】脳神経系の病気

脳神経系の病気(てんかん・水頭症・脳梗塞・脳腫瘍・小脳障害・髄膜脳炎・認知症)

てんかん
癲癇(てんかん)
【症状】
脳内の神経に異常な興奮が起こり、体のコントロールを失ってしまう状態のことです。
多く見られる症状としては、全身の痙攣、よだれ、失禁などがあります。
全身をピーンと伸ばし、手足をバタバタさせたりします。発作の間は、意識はない為、発作がおさまると何事もなかったかのように行動する事もあります。
また、発作中にバタバタする為、どこかから落ちて頭をぶつけたり、発作後、ふらふらする事も多いので、同様に頭をぶつけたりしないように細心の注意が必要です。
発作中は抱き上げたりせず、身体や頭をぶつけないように注意し見守るようにして下さい。

【原因】
癲癇には、大きくわけて「特発性てんかん」と
「症候性てんかん」があります。
「突発性てんかん」は脳内に異常が見られず、原因が不明と言われています。多くは遺伝が関係していると見られています。
「症候性てんかん」は脳内に脳腫瘍や水頭症など何らかの病原が引き金となりてんかん発作を引き起こすものです。

【治療】

症候性てんかんの場合には、てんかんの原因となっている病気に対する治療を行います。

特発性てんかんの場合は、癲癇発作の頻度にもよりますが、抗てんかん薬を用いての治療となります。但し、抗てんかん薬を用いる事で、副作用も生じる可能性があります。
治療が必要となる発作の頻度として、一般的には月に1回以上の発作があった場合、初めての発作でも1日に複数回起こした場合(群発発作)、また、発作の継続時間が長くなった場合にはすぐに治療を開始することになります。また、発作の頻度が短いスパンで起こるようになった場合も投薬の必要性が高くなります。
必ず掛かり付けの獣医さんに相談しましょう。
また、投薬の場合は副作用等の説明もしっかり受けましょう。

【予防】
確たる予防はありません。
発作の原因となる脳の異常を極めて早急に発見出来るように定期健診をしっかり受ける事も大切です。
また、特発性てんかんの場合は、発作を起こした際、また発作後の対応(頭や体をぶつけたりしない等)をしっかりしましょう。

水頭症
【症状】
脳や脊髄の周囲を循環している脳脊髄液(のうせきずいえき)と呼ばれる液体が、
何らかの理由で増え、脳を圧迫する事による病状になります。

症状としては、
頭部がドーム状にふくらむ
泉門の開放(頭のてっぺんにペコがある)
目が外下方を向いている(外腹側斜視)
動きが遅い
元気がなくなる
寝てばかりいる
異常な攻撃性
食欲不振
過食
視力障害(ものにぶつかる)
てんかん
などがあげられます。

【原因】
先天的要因( 遺伝)
アップルドームが理想とされるチワワを代表格に、トイプードル、パグ、ポメラニアン、
ペキニーズ、マルチーズ、シーズー、ボストンテリア、ヨークシャーテリア、マンチェスターテリア、ケアーンテリアなど、
小型で短頭種系の犬に多くみられるようです。
多くの場合、生後3ヶ月~半年の間に、様々な神経症状が現れます。

後天的要因
脳腫瘍、脳内出血、髄膜炎などの疾患により、脳脊髄液の循環経路が断たれたり、
脳脊髄液の産生が過剰になったりして、水頭症を発症する事もあります。

【治療】
対症療法
完治が難しい病気ですので、疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。
具体的には脳圧を下げるための副腎皮質ホルモン薬や降圧利尿薬などの投薬になります。。
外科手術
脳と腹腔をバイパス手術する「脳室腹腔シャント」(VPシャント)という手術が行われることがあります。
これは、脳内で過剰になった脳脊髄液を、特殊なチューブを通しておなかの中に循環させるというものです。
ただし、すでに脳神経が広範囲にわたって損傷を受けている場合は、シャントを設置しても
症状の改善につながるとは限りません。
またシャントによって脳脊髄液が腹腔内に流れすぎ、逆に脳にダメージを与えるという可能性もあります。
シャントを設置すると、一生涯外すことはできませんので、本当に必要なのかをよく相談する必要があります。

【予防】
予防が難しい病気です。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、上記のような症状が見られる場合は、
できるだけ早めにかかりつけの獣医さんへ連れて行き、診断を受けましょう。


Note!

泉門(せんもん)とは(通称ペコ)頭のてっぺんあたりにある骨のない柔らかい部分のことです。
その部分には骨がなく真下は脳になります。
頭の骨は1つの骨でできているわけではなく、いくつかの骨が組み合わさっています。
成長する上でぶつかりあわないよう遊びのスペースを持っていて、その間を「泉門(せんもん)」といいます。
成長に伴い、一般的には閉じていきます。
人間も赤ちゃんの頭って柔らかいのですが、成長するに伴い非常に硬くなっていきますよね。
チワワのようなドーム型の頭の形の犬や短頭種の犬たちの中には、この泉門が閉じずに開いたままの
犬が多く見られます。

この泉門と水頭症の因果関係は明確にはなってはいません。
泉門が開いている=水頭症ではありません。
泉門が開いていることは水頭症の症状の1つである場合もありますし、
泉門が開いていることが水頭症のリスクになる場合もありますし、
まったくの無関係という場合もあります。
水頭症のように頭蓋内の圧が上昇するような状態だと、この泉門は閉じづらくなってしまいます。
しかし水頭症の犬でも、泉門がきちんと閉じている犬もいます。

ただ、泉門部分は柔らかく脳が近いので、頭に衝撃が加わると、致命的なダメージを受ける場合もありますので、
気を付けるようにしましょう。

認知症
認知症(にんちしょう)
【症状】
認知症とは老化による判断力、認知力、学習能力に伴う行動の低下になります。
認知症には多岐にわたって個々による様々な症状があります。

判断力や行動低下の内容として大きく5つの状況下での症状が見られます。
①空間認知力の低下
●屋内で
・家具や壁にぶつかる
・間違った方向に進む
・徘徊 etc...
②対社会性の判断行動低下
・飼い主との遊びへの興味の低下
・飼い主のコマンドへの反応の低下
・飼い主の反応への興味反応低下
・屋外で出会った犬、同居犬への攻撃性
・屋外で出会った犬との挨拶行動の低下 etc...
③生活リズムの変化
・昼夜逆転(日中寝てばかりで夜中ずっと起きている)
・夜中の徘徊
・不眠と過眠を繰り返す etc...
④排泄のコントロールに低下
・トイレ以外での粗相
・排泄の前兆がなくなる etc... 
⑤活動能力と目的判断の低下
・何もない場所をみつめたり、目的なくうろつく。
・人や物を舐め続ける
・好奇心の低下
・食欲過多
・食欲減退 etc...

【原因】
確固たる原因は判明していませんが、人間のアルツハイマー同様、脳の老化による酸化や、遺伝因子によるもの、また、血管や代謝に関する症状(心疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病および肥満など)との関連性なども考えられるようです。

【治療】
これといった治療薬はありませんが、
EPAやDHAなどを含んだドッグフードや「抗酸化成分」(アミロイドの沈着を抑制することで脳の老化を遅らせることが主たる目的)の入った高齢犬用フード(処方食)やサプリメントが有効のようです。
また、認知症の症状が見られる場合には、その症状に寄り添った対応が必要になります。
例えば、昼夜逆転の場合、昼間はなるべく寝かさないようにしたり、徘徊がひどい場合は、怪我のないように安全を確保出来る範囲を限定的に動けるようにするなどの対策をしましょう。
また、体温調節も上手く出来なくなる為、温度管理もしっかりしましょう。
ストレスなども悪化の要因になりかねない為、粗相などで感情的に怒ったりしないようにしましょう。ストレスにならないように、軽い運動や食事のバランスも重要になります。
日常生活の中で、脳への刺激などを与える事で、症状の進行を遅らせる事も可能なのです。

【予防】
脳に刺激を与えて、日常的に脳の活性化をする事も大事になります。
積極的にお出掛けをしたり、知らない場所や人、犬と出会わせる、お散歩コースを毎日変えるだけでもよいでしょう。
また、家庭内でも、沢山コミュニケーションやスキンシップをとることも大事になります。

食事面では、老犬に至っては特に高齢犬用の抗酸化成分の入ったフードやサプリメント、必要カロリー数をオーバーしない範囲内で、抗酸化物質の豊富な食材(緑黄色野菜、にんじん、りんごなど)を適度に与える事も有効になります。
※犬に毒性となる食材は確認の上、絶対に避けましょう。

脳梗塞

【症状】
人間同様、脳内の一部の血管が狭くなったり、閉塞することにより、脳や血中の酸素やエネルギーを送る事が出来ず、脳組織が壊死し、脳に障害が生じる事です。脳血管障害のひとつを指します。
脳血管障害の中で最も犬に見られるのが「脳梗塞」になります。

問題が生じた場所によって症状に違いがあります。
大脳の場合→
沈鬱、筋肉の震え、その場でグルグル回る旋回、嗅覚障害など。
小脳の場合→
頭首の傾き、焦点が合わず眼が回っている眼振など。
【原因】
はっきりした原因は解明されていないようです。
ただ、老齢化に伴うものや、脱水症状、心臓病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などを併発している事が多く見られる事から、人間同様生活習慣病を起因とする事も考えられます。
また、腫瘍の転移、腫瘍細胞による血管閉塞、感染した寄生虫
によるものも報告されているようです。
【治療】
比較的早期発見が難しい病気の為、症状が出た後から治療を始め、命を取り留めたとしても麻痺などの障害が残る事もあります。
治療としては低酸素を予防するために酸素吸入を行ったり、脳圧が上がる事を防ぐために利尿剤の投与、脳のダメージを予防する為のステロイド投与があります。
【予防】
予防が難しい病気です。早期発見・早期治療が大切です。
日頃から愛犬の様子をよく観察する事と、定期的な健康診断を行いましょう。また、バランスのよい食事と適度な運動で健康維持に努めるようにしましょう。

脳腫瘍(のうしゅよう)
【症状】
脳内に腫瘍が出来る病気です。
一般的に多いとされているのは、脳と脊髄を取り囲む髄膜に発生する腫瘍で、「髄膜腫」と呼ばれるものになります。
症状は腫瘍が出来た部位によって異なりますが、一般的には・・・
その場でグルグル回る旋回、
頭首の傾き、
焦点が合わず眼が回っている眼振、
視力、聴覚、嗅覚の障害、
痙攣、
食欲不振、過食、
眼球の揺れ、
歩行困難(まっすぐ歩けない)、
動きたがらない、
性格が突然変わるなどが見られます。
てんかん発作を発症することもあるようです。
【原因】
脳自体の細胞が腫瘍化する「原発性脳腫瘍」と他部位に出来た腫瘍が点いする「続発性脳腫瘍」があります。
また、遺伝によるものや頭部のけがや外傷、放射線、農薬などといった外的要因によるものもあります。
【治療】
●緩和療法
症状にあわせて毎日の投薬を行う治療です。
場合によっては数回の放射線治療を組み合わせる事があります。
●放射線治療
人間同様、放射線を脳腫瘍に集中的に照射してがん細胞の増殖を食い止めます。残念ながら根治は難しく、腫瘍の成長速度を遅くするにとどまります。また、副作用(吐き気、口内炎、感染症など)もあるようです。
●外科治療
脳腫瘍の場所と種類によっては外科手術を行います。
●化学療法・薬物療法
抗がん剤は一般的に脳腫瘍にはあまり使われませんが、場合によっては他の治療方法と組み合わせて用いる事があります。
【予防】
予防が難しい病気です。また、進行が遅い傾向がある為、早期の発見がしにくい病気です。とはいえ早期発見・早期治療が大切です。
日頃から愛犬の様子をよく観察する事と、定期的な健康診断を行いましょう。また、バランスのよい食事と適度な運動で健康維持に努めるようにしましょう。

※脳に腫瘍があるかどうかの判断は、MRI検査や脳脊髄液検査をしなければ明確にはわかりません。この検査はどこの動物病院でも出来る訳でもなく、設備が揃っている場所でしか検査が出来ない事や高額な費用がかかるので、簡単に出来るものでもないようです。